ラーメン店でスープの表面にキラキラと輝く黄金色の油。その正体こそが、鶏の旨味を凝縮した「鶏油(チーユ)」です。家でラーメンを作っても「何かが足りない」と感じる原因の多くは、この油の不足にあります。
一見難しそうに思える鶏油作り方ですが、実はスーパーで手に入る手頃な材料だけで、驚くほど簡単に自作できます。鶏油があるだけで、市販のスープも一気に本格的なお店の味へと近づけることが可能です。
この記事では、料理初心者の方でも失敗せずに美味しい鶏油を作る手順から、保存方法、さらにラーメン以外の活用術まで詳しく解説します。黄金に輝く自家製オイルで、あなたのラーメンライフをさらに豊かにしてみませんか。
鶏油の作り方の基本:自宅でプロ級の味を再現する手順

鶏油作り方は非常にシンプルですが、丁寧な工程を踏むことで雑味のないクリアな仕上がりになります。まずは基本となる材料の選び方と、抽出の準備について見ていきましょう。
必要な材料は鶏皮だけ!安価に手に入る最高級の調味料
鶏油の主な原料は、鶏の皮です。スーパーの精肉コーナーで「鶏皮」として売られているものを用意しましょう。鶏もも肉を買った際に剥ぎ取った皮を冷凍して溜めておくのも良い方法です。
良質な油を抽出するためには、できるだけ鮮度の良い皮を選ぶことが大切です。解凍品よりも生の鶏皮の方が、臭みが少なく透き通った黄金色の油になりやすい傾向があります。
また、余裕があれば鶏のお腹周りにある「腹脂(はらあぶら)」を混ぜるのもおすすめです。精肉店などで分けてもらえることがあり、これを加えるとより濃厚なコクと甘みが引き立ちます。
下準備で決まる!鶏皮を細かくカットして効率よく抽出
買ってきた鶏皮は、まず軽く水洗いして表面の汚れや血を落とします。その後、キッチンペーパーでしっかりと水分を拭き取ってください。水分が残っていると、加熱時に油が跳ねる原因になります。
次に、鶏皮を1センチから2センチ角程度の大きさにカットします。細かく切ることで熱が均一に伝わりやすくなり、短い時間で効率よく油を溶かし出すことができるようになります。
皮に少し身がついている場合は、そのままでも問題ありませんが、身の部分が多いと油が濁る原因になることがあります。できるだけ脂身と皮を中心に使用するのが、綺麗な鶏油を作るコツです。
【基本の材料リスト】
・鶏皮:300g〜500g(お好みの量で)
・長ねぎの青い部分:1本分
・生姜のスライス:3〜4枚
・酒(あれば):少々
火加減が成功の分かれ道!じっくり弱火で黄金色を目指す
カットした鶏皮をフライパンや厚手の鍋に入れ、弱火にかけます。このとき、油を引く必要はありません。鶏皮自体からどんどん油が出てくるため、焦げ付かないように見守るだけで大丈夫です。
加熱を始めると、しばらくして「じゅわじゅわ」という音がしてきます。強火にしてしまうと油が酸化しやすく、色も茶色く濁ってしまうため、終始弱火をキープすることが最大のポイントです。
鶏皮が徐々に小さくなり、フライパンの中に透明な液体が溜まってきます。この液体こそが抽出されたばかりの新鮮な鶏油です。時々、全体を混ぜて熱が均一に通るようにしましょう。
香味野菜を加えるタイミングとおすすめの組み合わせ
鶏皮から半分程度の油が出てきたタイミングで、香り付けの野菜を加えます。定番は長ねぎの青い部分と生姜のスライスです。これらを入れることで、鶏特有のクセを抑え、芳醇な香りをプラスできます。
野菜を最初から入れてしまうと、油が抽出される前に野菜が焦げてしまい、苦味が出てしまいます。鶏皮が少し縮み始めたくらいで投入するのが、最も香りが引き立つベストタイミングです。
他にも、ニンニクを一粒加えたり、洋風の料理に使う場合は玉ねぎの端材を入れたりするのも良いでしょう。自分の好みに合わせて、香りのカスタマイズを楽しめるのも自作ならではの醍醐味です。
失敗しないための鶏油抽出のポイントと注意点

鶏油を自作する際、いくつかのポイントを押さえておくだけで失敗のリスクを大幅に減らすことができます。特に火の通しすぎには注意が必要です。
焦げは大敵!「じゅわじゅわ」という音に耳を澄ませよう
鶏油作りにおいて最も避けたいのが、鶏皮を焦がしてしまうことです。焦げた匂いが油に移ってしまうと、せっかくの繊細な鶏の風味が台無しになり、ラーメンの味を損ねてしまいます。
抽出中の音の変化に注目してください。最初は大きな泡が出て賑やかな音がしますが、水分が抜けていくにつれて音が小さく、繊細なものに変わります。この音の変化が終了間近のサインです。
鶏皮がキツネ色になり、カラッとした状態になったら火を止めましょう。余熱でも火が通るため、少し早いかなと思うくらいで火を止めて、ボウルなどに移す準備を始めるのが賢明です。
水分をしっかり飛ばすことが長期保存と美味しさの秘訣
油の中に水分が残っていると、保存している間に腐敗が進みやすくなります。しっかりと加熱して水分を飛ばすことが重要ですが、前述の通り火力が強すぎると焦げてしまうため、バランスが肝心です。
野菜を入れた場合、その野菜からも水分が出ます。野菜の周囲から泡が出なくなり、しなしなと乾燥した状態になるまで加熱を続けるのが一つの目安となります。水分を飛ばし切ると、油は澄み渡ります。
完成した鶏油は、一度しっかり冷ましてから保存容器に移します。温かいうちに蓋を閉めると、容器の中で蒸気が結露して水滴が落ち、劣化を早める原因になるので注意しましょう。
鶏皮の「残りカス」は捨てないで!絶品おつまみへの活用術
油を絞り出した後の鶏皮は、決して捨てないでください。これは「鶏油かす」や「鶏せんべい」と呼ばれ、カリカリとした食感と凝縮された旨味が詰まった最高の副産物です。
熱いうちに軽く塩を振るだけで、ビールやハイボールにぴったりの絶品おつまみになります。また、細かく刻んでチャーハンの具材にしたり、サラダのトッピングにしたりしても良いアクセントになります。
少し醤油と砂糖で甘辛く炒め直せば、ご飯のお供にも変身します。鶏油を作る過程で、もう一品おかずが出来上がると考えれば、鶏皮のコストパフォーマンスの高さに驚くはずです。
鶏皮せんべいを作る際は、油を濾した後に再度フライパンに戻し、表面がよりパリッとするまで短時間加熱すると、よりクリスピーな食感に仕上がります。
鶏油をより美味しくするこだわりのアレンジ方法

基本の作り方に慣れてきたら、次は自分好みの「特製オイル」へと進化させてみましょう。材料を少し変えるだけで、味わいの幅が大きく広がります。
濃厚なコクを出すなら「内臓脂肪(腹脂)」を混ぜてみる
プロのラーメン店のような、ガツンとくる重厚なコクを求めているなら、鶏の腹脂(はらあぶら)をぜひ探してみてください。これは鶏のお腹の内側に付いている白い塊状の脂肪です。
皮から取れる油よりも融点が低く、口の中でスッと溶けるような甘みが特徴です。皮と腹脂を7対3、あるいは5対5の割合で混ぜて抽出すると、非常にリッチな味わいの鶏油が完成します。
腹脂は精肉店で相談すると安く譲ってもらえることが多いですが、手に入らない場合は、できるだけ脂の乗った親鳥の皮を使うことでも、近いコクを出すことが可能です。
魚介の風味をプラス!煮干しや削り節で作る特製オイル
鶏油の抽出の終盤に、煮干しや鰹節、鯖節などを加えると、魚介の旨味が溶け出した「魚介鶏油」になります。これは醤油ラーメンや塩ラーメンに抜群の相性を誇ります。
煮干しを使う場合は、頭と腹わたを取り除いてから入れると、雑味のない上品な風味になります。厚削りの鰹節をそのまま油の中で熱するのも、香ばしさが際立つためおすすめです。
魚介系は焦げやすいため、火を止める2〜3分前に入れるだけで十分です。濾した後の魚粉や煮干しも、ふりかけなどに再利用できるため、無駄がありません。
スパイシーに仕上げる!唐辛子や花椒を加えた辛味鶏油
ピリッとした刺激が欲しい方は、スパイスを加えたアレンジに挑戦してみてください。唐辛子や花椒(ホアジャオ)を鶏油で煮出すことで、香りと辛さが共存する「鶏ラー油」が作れます。
抽出したての熱い鶏油を、粉唐辛子を入れた耐熱容器に注ぎ入れる方法もありますが、香りをより抽出したい場合は、弱火でじっくりとスパイスを加熱するのがベストです。
八角やシナモンを少量加えれば、一気にエキゾチックな中華風の香りになります。担々麺の仕上げや、いつものラーメンへの味変アイテムとして、一つあると重宝します。
自家製鶏油の正しい保存方法と賞味期限の目安

せっかく作った美味しい鶏油ですから、できるだけ長く、安全に楽しみたいものです。保存の際の注意点と、使い切るまでの目安を知っておきましょう。
酸化を防ぐ!遮光性のある瓶や密閉容器での保管が基本
油の最大の敵は「光」「熱」「酸素」です。これらに触れることで油の酸化が進み、嫌な臭いの原因となります。保存には、密閉できるガラス瓶やホーロー容器が最適です。
できれば光を通さない遮光瓶が良いですが、透明な瓶を使う場合は、アルミホイルで包むか、冷暗所や冷蔵庫の奥に置くことで光の影響を最小限に抑えることができます。
また、容器はあらかじめ煮沸消毒して乾燥させておきましょう。清潔な状態を保つことで、雑菌の繁殖を防ぎ、鶏油のフレッシュな美味しさを長くキープできます。
冷蔵保存と冷凍保存の使い分けと美味しい期間
作った鶏油は、基本的には冷蔵庫で保存します。冷蔵庫に入れると油が固まり、白いクリーム状になりますが、品質に問題はありません。使う分だけスプーンで掬って加熱すれば、すぐに元の液体に戻ります。
長期間保存したい場合は、冷凍保存も可能です。製氷皿などを使って小分けに凍らせておくと、必要な時に必要な分だけ取り出せて非常に便利です。以下の表に保存期間の目安をまとめました。
| 保存場所 | 保存期間の目安 | おすすめの保存方法 |
|---|---|---|
| 冷蔵庫 | 1〜2週間 | 密閉できるガラス瓶 |
| 冷凍庫 | 約1ヶ月 | 製氷皿やラップでの小分け |
保存期間内であっても、香りが弱くなったり、油っぽい臭いが強くなったりした場合は、早めに使い切るか使用を控えるようにしましょう。
油の劣化を見極めるサインと安全に使い切るための知識
自家製の鶏油には保存料が含まれていないため、市販の油よりもデリケートです。劣化した油を摂取すると胸焼けの原因にもなるため、使用前には必ず状態をチェックしてください。
チェックポイントは「匂い」と「色」です。古い油特有の酸っぱいような臭いや、色が以前よりも明らかに濃くなっている場合は、酸化が進んでいるサインだと判断しましょう。
また、一度調理に使用した鶏油を再び容器に戻すのは避けてください。他の食材の水分やカスが混ざると、一気に腐敗が進んでしまいます。常に清潔なスプーンで取り出すのが鉄則です。
ラーメンだけじゃない!鶏油を活用した絶品レシピ集

鶏油はラーメンのトッピングとしてだけでなく、万能な調理油として様々な料理に活用できます。その旨味を活かしたアレンジ料理を紹介します。
チャーハンが変わる!お米一粒一粒をコーティングする技
いつものチャーハンを作る際、サラダ油の代わりに鶏油を使ってみてください。鶏の旨味がお米を包み込み、まるでお店で食べるような、しっとりかつパラパラの仕上がりになります。
鶏油はサラダ油に比べて風味を強く感じるため、味付けを少し控えめにしても十分に満足感のある仕上がりになります。具材として、鶏油を作った後の「皮かす」を入れるとさらに完成度が上がります。
強火で熱したフライパンに鶏油を広げ、卵とご飯を素早く炒め合わせるのがコツです。立ち上る香ばしい鶏の香りが食欲をそそり、家族も驚く本格的な一杯になるでしょう。
野菜炒めが本格中華に!鶏の旨味を纏わせる調理のコツ
野菜炒めを美味しく作る秘訣は、高温で短時間に加熱することと、コクのある油を使うことです。鶏油を使えば、ただの野菜炒めが深いコクのある一品料理へと昇格します。
キャベツやもやしなど、水分の多い野菜を炒める際に鶏油を使うと、野菜の表面に旨味の膜ができ、水分が出るのを抑える効果も期待できます。これにより、シャキシャキとした食感が保たれます。
仕上げに醤油を一回しするだけで、鶏の香りと醤油の香ばしさが重なり合い、ご飯が止まらないおかずになります。シンプルな料理こそ、油の質の違いがはっきりと現れるのです。
卵かけご飯(TKG)の隠し味!数滴で贅沢な朝食に
意外な組み合わせかもしれませんが、卵かけご飯に鶏油を数滴垂らすと、驚くほど濃厚でリッチな味わいになります。これは、卵のまろやかさと鶏油の脂分が絶妙にマッチするためです。
醤油の代わりに、鶏油と塩、あるいは少しの白だしを混ぜて食べるのもおすすめです。朝から高級な鶏白湯雑炊を食べているかのような、深い満足感を得ることができます。
忙しい朝でも、冷蔵庫から鶏油をひと掬いするだけで、贅沢な気分を味わえるのは手作りならではの特権です。ぜひ一度、この禁断の美味しさを体験してみてください。
【他にもこんな使い方】
・ポテトサラダに混ぜてコク出し
・ステーキを焼く際の牛脂代わりに
・スープの仕上げに数滴垂らして香り付け
・茹でたパスタに絡めて鶏風味のオイルパスタに
鶏油作り方と活用法のまとめ:黄金の油で料理をもっと楽しく
ここまで、鶏油作り方の基本から応用までを詳しくご紹介してきました。鶏油は、鶏皮という非常に安価な材料から生まれる、魔法のような万能調味料です。
じっくりと弱火で加熱し、黄金色の輝きを引き出す工程は、まるで宝物を育てているような楽しさがあります。失敗しないコツは、焦らずにじっくりと時間をかけ、音の変化に耳を澄ませることです。
一度手作りの鶏油を味わってしまえば、もう市販のオイルだけでは物足りなくなるかもしれません。ラーメンの味を格上げするのはもちろん、日々の料理にコクと深みを与えてくれる鶏油を、ぜひあなたのキッチンの定番に加えてみてください。手作りならではの芳醇な香りが、食卓をより豊かに彩ってくれるはずです。



